合同新聞朝刊にてコラム掲載しています【第3回】
全10回コラムで泌尿器の病気について解説していきます。ぜひ紙面でもご覧ください。
【第3回】 ほぼ頻尿を伴う過活動膀胱
(大分合同新聞 2023年3月6日 朝刊掲載)
過活動膀胱は、急に尿意を感じてトイレに駆け込む(尿意切迫感)状態です。
ほぼ頻尿、夜間頻尿を伴い、間に合わず漏れてしまう(切迫性尿失禁)こともあります。患者数は40歳以上の12.4%、約810万人とされていますが、実際に医療機関を受診して治療を受けている人は、そのうちの20%にすぎないと推測されています。
治療法は生活指導や骨盤底筋体操、膀胱訓練、低周波治療などの行動療法のほか、薬物療法や磁気刺激治療法、仙骨刺激療法などがあります。
問題点としては、行動療法は継続しにくく、薬物療法は基本的に内服の継続が必要であり、口が渇きやすい、便秘、かすみ目、排尿困難などの副作用があります。治療薬として一般的な抗コリン薬という薬は、同時に服薬できない病気があったり、認知症などの重大な副作用もあったりするため、処方できない人もいます。
薬物療法などで効果がない方は、難治性過活動膀胱や神経因性膀胱(何らかの原因で排尿に問題が生じている)が原因に考えられます。
このような場合は、膀胱鏡というカメラを使って膀胱の筋肉にA型ボツリヌス毒素を直接注射する方法があります。筋弛緩作業のあるA型ボツリヌス毒素の膀胱壁内注入療法の効果は2000年に初めて報告され、その高い有効性と安全性から欧米を中心に普及しています。A型ボツリヌス毒素は眼瞼(まぶた)けいれい、顔面けいれんなどで治療薬として使われています。
手術時間は5~10分程度で、1回の投与で4~8カ月治療効果が持続するとされています。効果が弱くなった際は追加治療が可能です。日本では20年から保険適応になっています。この治療は認定医資格が必要で、治療可能な医療機関は限られています。
トイレが近くて間に合わない、漏れてしまって困っている、薬が効かない、副作用がつらくて内服を続けることができない—といった方は、気軽に泌尿器科を受診してください。