泌尿器科と言うと、女性の患者様には敷居が高く、受診しづらい診療科と思います。このため、内科や婦人科を受診するものの、治療がうまくいかず、病院を転々とされる方も大勢おられます。
排尿に関する異常は、女性にとって重要な問題であり、年齢とともに、尿失禁(尿が漏れる)、骨盤臓器脱(膣からピンポン玉のような丸いものが触れる)、頻尿(トイレの回数が多い)などの症状を訴えられる方が多くおられます。
大分泌尿器科病院では、このような悩みを持つ女性の生活の質(QOL)の向上を目指し、また気楽に相談できる窓口として、女性泌尿器科外来を開設しました。以下のような悩みをお持ちの方は、年齢のせいにせず、気軽に受診いただければと思います。
このような症状でお悩みの方へ
尿失禁
女性の尿失禁の主なものには、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、これらが混合した混合性尿失禁があります。
腹圧性尿失禁は、咳やくしゃみ、重たい物を持った時など、お腹に力が入ったときに尿が漏れてしまうタイプの尿失禁です。加齢や出産を契機に生じることが多く、骨盤底の筋肉が弱まり、尿道を支える筋肉や括約筋の力が低下することが原因とされております。
切迫性尿失禁は突然強い尿意を感じ、トイレに間に合わずに漏れてしまう、力を入れていないのに漏れてしまうといった症状です。
トイレが近くなり、トイレに駆け込むことが多くなるため、外出時は特に困ります。そのため、トイレに駆け込むことを避けようとし、早めに排尿する習慣がつき、頻尿となることもあります。
治療法
腹圧性尿失禁
保存的治療
…骨盤底筋を強くする運動(骨盤底筋体操)、内服による治療があります。
手術療法
……保存的治療で改善しない重度の症状の方は、手術の適応となります。(TOT、TVT)
切迫性尿失禁
過活動膀胱の治療法に準ずる
骨盤臓器脱
骨盤の中には、膀胱、膣、子宮、直腸が存在しており、これらを骨盤臓器と呼びます。骨盤臓器は、互いにバランスを取り合い、周囲の筋肉や靭帯(骨盤底筋)などに支えられています。骨盤臓器脱とは、出産や加齢などが原因で骨盤低筋が緩み、子宮、膀胱、直腸が骨盤の中から膣に下がってくる病気の総称です。骨盤臓器脱の症状は軽度であれば、無症状なのですが、脱が悪化すると、下腹部不快感、膣からピンポン玉のような丸いものが触れるなどの下垂感、膀胱や直腸が下がることにより、尿が出にくい、尿が漏れる、便が出にくいなどの症状をきたすようになります。
治療法
保存的治療
…骨盤底筋を強くする運動(骨盤底筋体操)
ペッサリー(リング状の装具)を膣内に入れて下がっている臓器を支えます。
レーザー治療
手術療法
…腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)
過活動膀胱
ここ最近、マスメディアによって、認知度が上昇している疾患の一つです。「トイレが近い(頻尿)」、「急に我慢ができない強い尿意が起こる(尿意切迫感)」などの症状が主症状の疾患で、40歳代から増え始め、日本で患者は810万人が過活動膀胱の可能性があると言われております。年齢とともに、罹患率は増加し、80歳以上では4割以上が罹患すると言われております。年齢のせいにせず、治療により改善するので、ご相談ください。
治療法
保存的治療
…内服治療(抗コリン剤、選択的β3アドレナリン受容体作動薬)
手術療法
…ボツリヌストキシン膀胱壁内注入療法
内服治療の副作用が強い、難治性過活動膀胱の場合には、外科的治療も検討します。
当院の症例数は全国有数です。
間質性膀胱炎
尿が溜まった時の下腹部痛、頻尿、尿意切迫感などの症状をきたす疾患で、過活動膀胱と似た症状を呈することもあります。中高年の女性に多く、一般的な細菌性膀胱炎とは異なり、検尿で所見がないこともあります。
間質性膀胱炎が疑われる場合は、診断と治療を兼ねて、内視鏡下に膀胱水圧拡張術を行います(膀胱内に生理食塩水を注入して、膀胱を拡張する手術)。間質性膀胱炎の方は、膀胱を拡張すると、散在性の点状出血や膀胱粘膜が裂けるハンナー潰瘍を認めます。この部位が痛みの原因となっているので、出血、潰瘍部位を電気メスで切除、凝固することにより、自覚症状は改善します。ただし、治療効果は半年から1年と短いこともあり、何度も治療を行う方もいます。